魂の輝きに

囀る鳥は羽ばたかない 6巻考察②「親とは何かー失いながら生きる者」

続いて作中唯一、魅力的な親として描かれている三角さんについて。

親殺し子殺し

ヨネダ氏の作品で印象的なのは2008年発刊の「どうしても触れたくない」。
外川の母親がノイローゼから家に火をつけ弟が死んだ話。
ボーイズラブのエピソードとしてはやや唐突だなと思った記憶。

一般誌作品Opでは親殺しの少年クロと子を失った夜明を描き、そして本作囀る鳥は羽ばたかない。
親殺し子殺しはヨネダコウ氏の作家としてのテーマと言える。

親殺しは巣立ちのための通過儀礼として有名ですが、じゃあ子殺しはなんなのか。
子殺し、それは親の都合で子の生命や人生を左右すること。

矢代の母親は男を繋ぎ止めるために矢代を見殺しにし、平田は自分の立場のために矢代の命を狙い、三角さんは自分に恥をかかせた平田を始末した。

親の立場

親(三角さん)の愛を求めていた竜崎も平田も、一方で組長という親の立場にあった。
組員(子)を大切にしていた竜崎の松原組は解散、平田は一緒にいた手下を豪多組の残党に殺され…と彼等はあまり良い親ではいられなかった。

親は愛を求められる立場であり、愛を与えようとする立場でもある。
それは想いとは裏腹に、往々にしてままならないもの。

親は子を選べるのか

子は親を選べない、というのはよく言われることですが、では親は子を選べるのか。

そもそも三角さんが矢代を自分の子として選ぼうとしたことが一連の物語の発端になっています。

「親バカ」として矢代を溺愛しているように見える三角さんですが、黒羽根の一件について「そんなもん求めてない 誰も代わりにならねえ」と回想している通り、一番愛した男も女ももうこの世にはおらず、誰も変わりにならないと分かっている。

奥さん、黒羽根、竜崎、平田、立木会長と人生で得てきた大半のものを失ってきた三角さん。
次は矢代と天羽さんかと考えてしまう。

失いながら生きること

子の苦悩。それは親の愛を求めようとする苦しみ。
得ようとすることが子なら、失う我が身を受け入れて生きるのが親。

失うことを受け入れて生きる。
それが子と親の違いなのかなと。

さあ矢代を失うことを、三角さんは受け入れるだろうか。


次は矢代に訪れた救いについて考察予定。(続く)